「それは、こちらのセリフです…今度、再び皇帝陛下の御身に手出しがあらばその時は
あなた方の崇めるその神ごと全てを打ち滅ぼしてご覧にいれましょう…」
キルヒアイスの言葉に大司教は返す言葉を失くした。
最早立つ力もないのかがくりと肩を落としてそのまま椅子に腰を下ろすと、
その両手を顔にあてて小さな声でなんとか大司教が言葉を口にする。
『…迎えを、よこしてくれ、ルビンスキーを…引き渡す…』
「懸命な判断です…あなたは見事地球の危機を救われたのです。猊下…貴方に神のご加護を」
そういってキルヒアイスは大司教との通信を終わらせたのだった。
100年にも渡った地球教の野望は今まさにこれをもって打ち砕かれたのである。
彼らは地球から毎日月を見ながらこの日味わった恐怖を思い知ることとなるだろう。
大きな黒い穴を2つ空けた赤い月が今もなお彼らの天上を照らし続けていた。
キルヒアイスはその後ベルゲングリューンへの回線を繋いだ。
「ベルゲングリューン…交渉は無事に終わりました。
貴方はミュラー艦隊と合流してルビンスキーの身柄を押さえてください。
ミュラー艦隊には地球への運行が正常に戻るまでの間、物資の提供を続けて頂きます」
『は…ッ』
キルヒアイスは万一を考えて地上への突入部隊をベルゲングリューンに別働隊として指揮させていた。
勿論それはルビンスキーを捕獲するためのものである。
周到なキルヒアイスのその手並みに皆はひたすら舌を巻くしかない。
「ベルゲングリューンを向かわせていたのか…キルヒアイス」
「まあ…必要になる事態が避けられたのは何よりでした。
…実は、正直なところ大司教猊下も薬で頭がぼけてまともな話は出来ないのでは、
などと思っていましたもので」
あっさりとそんなことを言ってのけるキルヒアイスに皆はただ唖然とするばかりだった。
「…それではルビンスキーを捕らえた時点で地球への運行を再開させて下さい」
話しをしながらキルヒアイスが席から立ち上がる。
「キルヒアイス…?」
「そろそろ、お昼の時間です…陛下に食事をお持ちしなければ。
なんとかお昼に間に合ってくれて助かりました…」
そういってそのままキルヒアイスは皆を残して急ぐようにその場を立ち去ってしまう。
取り残された面々は最早言葉もでない。
「おい…もしかして、キルヒアイスが急いでいたのは…」
「…陛下のお昼の時間が近かったからなのか?」
ようやく顔を見合わせて出た言葉も
会議室の中がさらに沈黙を広げる結果になってしまったのだった。
確かに今回も実際には予想に反して血はほとんど流れなかった。
ほとんど無血ではある。
亡くなった者といえば先日の襲撃事件でキルヒアイスに眉間を撃ち抜かれたテロリスト一人だけだ。
だが流されなかった血以上にキルヒアイスが後に残したものは果てしなく大きなものだった。
それは誰もが今回の件で思い知ったことだろう。
特に地球に今なお暮らし続ける人々は
月を貫くあの二つの穴を毎晩見上げる度にこの日を思い返すに違いなかった。
やがてルビンスキーの引渡しを無事に終えたベルゲングリューンが艦隊を引き上げさせ、
ミュラー艦隊は引き続き物資の提供を続け地球への運行が無事再開されるのを確認して
フェザーンへと戻ったのだった。
こうして事件はルビンスキー逮捕で収まりを見せまた穏やかな日常がその姿を見せ始める。
ラインハルトの回復振りもそれからは見事なもので
その後1ヶ月を待たずして禁断症状から解放されたラインハルトは
皆の前に出ることが出来るようになったのである。
キルヒアイスを背後に伴わせて会議室に姿を見せたラインハルトのその姿に
皆は涙を浮かべずにはいられなかった。
「陛、下…ッ」
「皆には長らく苦労をかけたな…」
ラインハルトのその言葉にビッテンフェルトなどは感極まってその目から涙を流していた。
「いいえ、いいえ…陛下ッ」
「皆、席につけ…このままでは話も始められないだろう?」
ラインハルトの言葉に皆が自分の席へと戻っていく。
そこでふと自分の席にラインハルトが目をやるとそこには見覚えのある砂時計があった。
その視線に気がついたビッテンフェルトが慌ててそれの説明する。
「あの…っそれは自分がキルヒアイス元帥に頼んでそこにおいて頂いたのです」
「…そうか、いや。これには随分と世話になったな、余も…」
笑いながらそういうとラインハルトはその砂時計をそのままそこに置いたまま席へとついた。
「…そうだ、キルヒアイス。今から余の部屋に戻ってとってきて欲しいものがあるんだが」
「部、屋…?今から、ですか?」
席に着いた途端ラインハルトが思いついたようにキルヒアイスに話しかける。
「ああ…今しか駄目だ。引き出しにしまってある…だが、急がなくていいぞ?」
「は、あ…」
少し首をかしげたもののキルヒアイスは
ラインハルトから引き出しの鍵を受け取るとそのままその場を後にした。
キルヒアイスの姿が消えたのを確認してラインハルトは
早速今回の事件の詳細を記された書類に目を通し始める。
「…ラングを復職させたか」
「それは、その…」
ラインハルトの言葉にヒルダが弁明を入れようとするがラインハルトは手を翳してそれを制した。
「仕方あるまい…キルヒアイスが動こうにも
その間アイツは中毒患者の世話に明け暮れていたのだから、な」
「陛下…ッ」
ラインハルトの自嘲めいたその言葉にヒルダは慌てて言葉を返そうとするが
それも意に介さないままラインハルトは引き続き書類に目を通していく。
「…結局、亡くなったのは襲撃事件での一人だけという訳か。
まあ、これは…思ったよりはマシ、というやつだな…」
「マシ…です、か?」
ようやく目を通し終えたラインハルトがその書類を机に置いた。
「そうだ…アイツのことだ。キレて地球に核融合ミサイルでも撃ち込みかねんからな…」
ラインハルトのその言葉に皆がはっとするように静まり返る。
実際地球へは撃ち込まれはしなかったがあの時警告として
キルヒアイスは月へと核融合ミサイルを2発撃ち込んでいる。
モニターに映し出された赤い月に刻まれた2つの大きなクレーターの姿は
その日味わった恐怖とともに皆の記憶に焼き付いて消えることはないだろう。
「…キルヒアイス元帥は神をも恐れません、陛下」
「それでいい…アレのすることに神の許しなど必要ない。
今までも、そしてこれからもそうだ。アレの全てはこの余がその全てを許す…」
ラインハルトは皆にそう宣言するとその言葉に皆が息を飲んだ。
だがそのままラインハルトは更に言葉を続けた。
「分からぬか…?余はこの世で最も敵に回したくない者だからこそ
自分の唯一腹心の親友として傍に置くことを望んだのだ、
今回の件で…それは皆にも分かったのではないのか?」
返す言葉がないとはまさにこの事である。
これまでもキルヒアイスのその実力は皆の知るところにあったが
今回の件で、最早誰もがラインハルトの傍にいるキルヒアイスの存在を認めない訳にはいかないだろう。
「おっしゃる通りです…敵に回せばこれほど恐ろしい男を私は他に知りません」
「味方であったことに感謝したいものですな…」
皆も相槌をうってラインハルトへ言葉を返した。
「…昔からそうだが、アレはこと姉上と余のことに関しては加減というものを知らぬのだ。
かつてアレを本気で怒らせて生き残ったものなど…ああ、一人いたな。そういえば」
「陛下…?」
ラインハルトが聞き返すミッターマイヤーと隣のロイエンタールを見ながら話しを進める。
「卿ら、覚えてないか…?ガイエスブルグ要塞で旧貴族…いや、賊軍との戦いの時のことだ。
オフレッサーという化け物がいただろう?」
オフレッサー上級大将。
すでにこの世にはいないが旧帝国ではその怪物じみた容姿と残忍な殺しぶりから恐れられていた男である。
その当時、白兵戦において彼は無敵を誇っていた。
だがその時キルヒアイスはガイエスブルグにはおらずラインハルトの代理として
辺境星域の平定を命じられその場にはいなかった。
オフレッサーを生かしたまま捕らえるという命令をラインハルトに命じられ
ミッターマイヤーとロイエンタールは白兵戦を展開するも、
それは悉くオフレッサーの返り討ちにあって艦隊の多くの白兵戦部隊が壊滅に追い込まれた。
結局ミッターマイヤーとロイエンタールが二人がかりで自らを囮にして
罠を仕掛けてなんとかオフレッサーを捕らえたのだ。
まともに一対一でやりあおうなどとは考えすら及ばない相手である。
「オフレッサーがキルヒアイスがいないのをいいことに
モニターで余に戯けたことを言いたい放題抜かしていただろう…?」
それはオフレッサーがモニター越しにラインハルトに贈ったメッセージにあった。
『オマエを守る赤毛の男は今ここにはいないぞ…』
そう言っていたのである。
ようやくそれを思い出した二人はラインハルトに話を聞き返した。
「…キルヒアイスとオフレッサーは、以前になにかあったのですか?」
「あったもなにも…あの猛獣に引き裂かれただの、
いろんな噂が飛び交っていたあの顔の傷跡…アレは、キルヒアイスがやったものだ」
その言葉に皆が目を見開いてラインハルトに話の先を促すように眺める。
「確か、幼年学校の頃だったな…どうも、あの馬鹿。
キルヒアイスの前で酷く姉上を侮辱する言葉を口にしたらしくてな。
生きたままキルヒアイスにその目を抉られたのよ…ザマはない。
オフレッサーからすればあの時のキルヒアイスは確かに猛獣であったかも知れんが…余が止めねば
両方の目はキルヒアイスによって抉り取られていたことだろうよ」
おかげでキルヒアイスの前ではすっかりおとなしくなって自分の前では文句をいうことがなくなった。
などと、オチまでつけて笑ってラインハルトは皆に聞かせてやった。
「…まあ、結局は死んだがな…アレも」
オフレッサーの恐ろしさはここにいる誰もがその記憶に新しい。
ミッターマイヤーやロイエンタールは実際にそれを身を持って経験している。
聞いただけでも背筋が冷たくなるような話だった。
「…なにを、話し込んでいらっしゃるのですか?」
そこにいる全員が一瞬その声に身をびくりと震わせた。
噂の主であるキルヒアイスが会議室に戻ってきたからである。
皆の様子に首を傾げながらキルヒアイスは自分の席へと着いた。
「いや、なに…オマエを怒らせると怖い、なんて話をしてたのさ」
「怖、いですか…?」
キルヒアイスはラインハルトの言葉に考え込むように手を顎において顔を俯かせる。
「怖いぞ…相当。オマエ、自覚ないんだ…?」
「なにがです…?」
そのまま視線を逸らさずキルヒアイスはラインハルトにその目を合わせて真面目にそう答えると
呆れた顔をしてラインハルトは今度は話題を変えてキルヒアイスに話しかける。
「まあ…いいか。ところで…探しものは、見つかったのか?」
「はい…」
それまでにない笑顔でキルヒアイスはラインハルトの言葉に返事を返したのだった。
キルヒアイスのその返事にラインハルトもまたこれ以上にない笑顔で頷いてそれに答える。
「そうか…それは、なによりだ」
そういってラインハルトは再び会議を再開させた。
「…皇帝誘拐を企てた実行犯を流刑に?極刑ではなく、か…?」
報告書に目をやりながらラインハルトが意外そうにキルヒアイスの方に目をやった。
「はい…極刑をご希望でしたら…そのように、すぐに手配致しますが」
遠慮がちにそう答えるキルヒアイスにラインハルトは笑って返事を返す。
「はは…いや…いい。やはりそれがオマエらしいよ、キルヒアイス…皆も、そう思うだろう?」
「はい」
ラインハルトのその言葉に頷きながら皆がキルヒアイスに顔を向けた。
それこそ皆の知るいつものキルヒアイスだからだ。
皇帝誘拐をした以上本来なら厳罰をもってあたるべきことではあったのだが
こと相手がヴェスターラントの被害者である上に地球教によって家族を人質に取られ
麻薬の中毒患者にまでされていたのならばそれ以上のことは当事者のラインハルトが認める以上
皆にはなにも言い返すことなど出来ない。
”私には彼らを罰する資格などなかった…
彼らにもまた守るべきものがあり、そのために命をかけたのだ…
再び事を起こそうとするなら容赦をする気はないが、
ラインハルト様がご無事であったのならばそれ以上のことはすまい…”
そう考えてのキルヒアイスの決断だった。
辺境星域での強制労働とは刑を執行するためにその名をつけただけの名ばかりのものだった。
皇帝誘拐に失敗した彼らは拷問から解放された後手厚く看護を受けてその身を回復させると
家族との再会を果たして新しい土地と家を手に入れていた。
そこに同行したケスラーに彼らはキルヒアイスからの伝言を聞かされることになる。
『失われたヴェスターラントの血はこの身の生涯全てをもってしても決して購いきれるものではありません…
ですが、これからのあなた方の幸福な生活を守るためにこれからも私達は戦いを続けます。
住むべき土地を無残にも奪われたあなた方にはその幸福を主張する権利があり、我々にはそれを守る義務がある。
永遠の平和をお約束することは叶わなくともローエングラム皇帝陛下のおわす限り、
この誓い、必ず果たしてご覧にいれましょう…
今はただあなた方のこれからの幸福を私は祈らずにはいられません』
そう長いものではなかったがキルヒアイスの肝心な想いは彼らに伝わったようだった。
彼らはその返事の代わりにとケスラーに一言の伝言を預けていた。
『私達はこの遠い空の下からあなた方の誓いと
その全てを見続けましょう…子々孫々に到るまで』、と。
その日の午後ラインハルトはヴェスターラントの慰霊祭に参列していた。
ラインハルトは元々この式典に合わせてその体調を整えていたのである。
ヴェスターラントの関係者の前で壇上に上がったラインハルトは演説の最後をこう締め括った。
「…全ては、その時若輩で力いたらぬ余の力にあった。
ヴェスターラントの被害者、そしてその親族に到るまでこれからの幸福は
皇帝の名のもとに全力をもってこれを保証するものである」
ヴェスターラントの件はまだまだ解決には時間が必要な問題である。
だがそれはこれから善政を布いて贖うより他に道はない。
その流された血よりも遥かに多くの血を救うことだ。
ヴェスターラントの過ちをラインハルトはすでにその身に染みて思い知っている。
自分に迷いは許されないということ。
そしてその迷いは再びヴェスターラントの悲劇を招くということを…
あの時、自分に少しの迷いさえなければ未然に防げたことなのだ。
”だからこれからは決して迷いはしない…この身をもってオレはそれを証明し続けてみせる”
この先どれほどの苦難がこの身を襲おうとも
傍にはいつもと変わらないキルヒアイスの姿がある。
傍にいるキルヒアイスの姿を確認しながらそう心を決めるラインハルトだった。
ラインハルトが壇上で話しをする中、
キルヒアイスは会議室から部屋へと戻るように言われた時のことを思い返していた。
ラインハルトから貰った鍵で引き出しを開けると
そこには一冊の本があり、本を開くと挟みこむように手紙が入っていた。
それはキルヒアイスにあてたラインハルトからの手紙だった。
いつも傍にいるせいか正直ラインハルトから手紙を貰ったのはこれが初めてのことである。
通信モニターを介して会話することはあっても
手紙でのやりとりなどはこれまでには皆無のことだった。
封筒に自分の名前を確認するとキルヒアイスはそっとその封を開けた。
『キルヒアイス…こうしてオマエに手紙を出すのはなんだかひどく恥ずかしくて照れくさいものだ。
だが、こうでもしないととても今のオレには自分の口からは言えそうにない…
オレはオマエにどうしても言っておきたいことがあるんだ』
ラインハルトからの手紙はそんな始まりだった。
ラインハルトがキルヒアイスにどうしても言っておきたかったこと。
それは…
『今のオレが欲しいもの、なんだか分かるか?
でもオマエならきっと言わなくても分かってくれるだろう?』
”今の貴方が欲しいもの…それは、今の私と同じものでいいのでしょうか…”
『もちろんそれは薬なんかじゃない、オレはもうちゃんと思い出しているぞ?』
浮かぶ涙に文字が薄れてキルヒアイスはまともにその手紙をみることが出来ないでいた。
零れようとする涙を手の平に押さえ込みながら、
ラインハルトの手紙の文面がキルヒアイスの目の中に入ってくる。
『…オマエはいつも、オレと一緒に同じ思いを感じてくれるだろう?』
二人はあの日を境に身体を重ねることがなくなっていた。
だが二人とも自分からは決して言い出せない状況にあった。
キルヒアイスはラインハルトを傷つけてしまった自分を今でも許せないでいたし、
ラインハルトもまた皇帝の名を使って命令してその行為を強いてしまったことに深く後悔を覚えていたからだ。
”ラインハルト様…”
『…なあ、こうは思ってはくれないか。オレ達は一緒にいなきゃ駄目だ…
オマエでないとオレは駄目だし、オマエもオレでないと駄目であって欲しい…だから、キルヒアイス』
”そうです…私はあなたがいないと駄目です…あなたでないと”
『だからオレはあの時の自分を忘れない…もう二度と同じ過ちを犯さないために。
だからオマエも無理に忘れることはない、だがオレはその全て許すよ…そう、決めたんだ』
”ああ…ラインハルト様…私は今、あなたに会いたい…
今この場に貴方がいるならば貴方を息が止まるほどに抱きしめて閉じ込めてしまうのに…ッ”
懐かしいのはその記憶に残るラインハルトの体温。
自分より幾分低いラインハルトの身体の熱が自分の与えた愛撫によって熱くなりその姿を変えていく。
そしてその腕を開いて自分の全てを受け入れてくれるラインハルトの姿がキルヒアイスの脳裏に浮かんだ。
『だから…オマエも全て許してやってはくれないか…?』
そこで手紙は終わっていたが、ラインハルトのベッドに座り込んだまま
キルヒアイスはそこから身動きをすることが出来ないでいた。
手紙を握りしめキルヒアイスは空いた手でその顔を押さえ込む。
震える身体を必死に押さえ込みながら何度もその手紙に書かれた言葉を反芻させていく。
”…やはり、あなたには誰も敵わない…ラインハルト様”
そんなことを心の中で呟きながらキルヒアイスは手紙を自分の部屋に片付けると
気を落ち着かせてラインハルトの待つ会議室へと戻ったのだった。
「キルヒアイス…どうした?ぼっとして」
その言葉にキルヒアイスが一瞬で回想を打ち切ってラインハルトを見やる。
「いえ、なんでも…」
「…なんだ、せっかくのオレの演説を聴いてなかったのか?」
キルヒアイスの様子にラインハルトがからかうように笑いかけた。
「ちゃんと聞いておりましたよ…ラインハルト様」